僕だけの瑠璃色
テンションがた落ちのパパから、高田清美さんとかいう人の履歴書を取り上げてやった。


白と黒の細々しいかちかちな履歴書。

……大人の書く物って、どうしてこんなに読みにくいのかしら。



そんな中に一つ、色のある小さな写真を見つけた。

証明写真の高田清美さん。

……見るからに、出来そうな女性ってかんじよね。

大人っぽい奥二重とか、きっちり分けられた前髪とか、その綺麗な姿勢とか…。



でも、その表情に一つの笑みもない。

証明写真だからかもしれないけど、そのオーラから私が感じ取ったのは、とてもとても冷たい何か。














………何よ。


ママはもっと優しそうよ。

ママはセンター分けじゃないし。

いつもニコニコしてるわ。

こんなきちんとしたスーツ、ママには似合わないし。

ママはもっと頭悪そうよ。






そうよ、ママは…

ママ、は……




















「…………ママ?」



どうしてなのかしら。

私がどう否定したって、

私の心はどうしても、

この高田清美さんって人を

ママだ、ママだ、って…

叫ぶのよ。









似てるわ。

いや、似てない。

でも……やっぱりちょっとだけ。

ちょっと…いやそれ以上。

ママはもっと……

でもママと…………












「………瑠璃。どう?」



ぐるぐると、私の頭が仮定と否定を繰り返すの。

ありえないわ、こんなに似てるの。

同一人物…?そんなわけないでしょう、何を考えてるの私。

ママは死んだのよ。

お空で待ってくれているのに…




「………瑠璃!!」


「……ひゃっ…!」



突如、パパの大きな腕が私の肩を揺さぶった。


あまりにもびっくりして、清美さんの大切な履歴書を放してしまった。



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