僕だけの瑠璃色
珍しく今日は部屋の中が綺麗だわ。
当たり前よ、私が掃除したんだから。
パパより私の方が上手いんじゃないかしら。
そんなとき、玄関のドアが控えめな音を起てて開いた。
誰だかなんて分かってるわ。
「……あら、なかなかいいじゃない」
パパといえば、朝早くから私が追い出したっきりお昼まで帰ってこなかったんだけど、
たった今、弱々しい声で「ただいま〜…」って、帰って来たわ。
その瞬間私の口から出たのは素直な言葉がそれ。
本当に、なかなかいいんじゃないかしら。
「ぅう……瑠璃ぃぃ〜〜…こんなイマドキの若者スタイルなんて恥ずかしいよ〜…パパに似合いっこないよ〜…」
そう、パパは、朝早く私が家から追い出して美容院に行って来させたおかげで、イマドキスタイルになっているの。
パパは元が良いからまだまだいけるのに、パパったら小心者だから…またうじうじしてるわ。
美容院で綺麗にカットされた髪は、イマドキ風にちょっとワックスでセットしてあって、
いつもはよれよれのTシャツのパパが、今ではきっちり且つお洒落なジャケットに身を包んで、
靴は、履いたこともないんだろうお洒落なブーツ。
イマドキ風なんだけど、決して砕けた感じもなく、きっちりし過ぎているわけでもない……お洒落なスタイル。
…………素敵。
素敵だわ、パパ。
「………パパ、完璧よ。清美さんが来てもバッチリよ」
「………ほ、本当瑠璃?!パパ変じゃない?!似合ってる?!」
「ええ、私が言うんだから間違いないわ」
私が真顔で誉めると、あのお花が飛んでそうな笑顔が咲いた。
あら、眩しいわ。
さっきまでうじうじしてたくせに、ちょっと誉めるとこれなんだから。
まったく、単純よね、パパったら。