僕だけの瑠璃色
パパが頷いたのを確認して、私は自分のお部屋に行くの。

すぐさま閉めたドアに張りついて、聞き耳をたてるのよ。

あら、なんだかワクワクしてきた。



ガチャッ








「あ…どうも…」


「初めまして。今日からこちらでお手伝いをさせていただきます、高田清美と申します。以後よろしくお願い致します」


「あ、はははい…!あの…こんな狭い所で申し訳ないですが…!」


「有難う御座います。お邪魔させて頂きます」






……パパ。物凄くテンパってるわ。
せっかく見た目をかっこよく仕上げたのに、これじゃダサいの丸出しじゃない。

てゆーか、予想はしてたけど、清美さん堅いわ。堅すぎる。なんなのこの人。
ママの顔してここまで堅いなんて。声も単調だし。

ここまで機械的だと、飛び出して顔を生で見てやりたくなっちゃうわ。




「あ、スス、ス、シュリッパをどうぞ…」


「……シュリッパ?」


「あ!いえ、スス、スリッパ、です…!」


「…有難う御座います」




スリッパ言うだけにどんだけ咬んでるのよ。シュリッパって何よシュリッパって。清美さん軽く引いてるじゃないの。

どうやらパパはスリッパを清美に差し出したらしいわね。
パパなりに気を使ったのね。
まあまあだわ。





こちらがリビングになります。こっちがトイレで…なんて言って、これから今作成中の作品が完成するまでの間、何度も我が家に来るだろう清美さんに分かりやすいよう我が家の構図を説明するパパ。

冷蔵庫の中身まで説明した後、リビングのドアが閉まる音がした。

どうやらパパ逹はリビングに入ったらしいわね。



よし。二人っきりになった二人の様子を少しでも確認するために、リビングのドアのガラス越しを少し覗くわよ。








私が一生懸命掃除して綺麗になった部屋。

けど、部屋の一角を陣取っているパパの仕事机だけはいつもとおりごっちゃごちゃ。

パパが全て管理してる机だから下手に手が出せなかったのよね。




ちょっぴり背伸びをしたら、ちらりとパパが見えたわ。

いつも座ってる場所にパパがいて、

いつも私が座ってる場所に清美さんが向かい合って座ってる。



いつも私が座ってる場所に……














「あ、すみません。仕事机の上だけは、いつも片付かなくて…」


「……いえ。お気遣いなく」


「あ、はは………」















…………ほとんど初対面の二人が醸し出す空気。

めちゃめちゃ重いわ。

子供の私にもわかるくらい、重い。

そして気まずい。


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