僕だけの瑠璃色

重い空気をはぐらかすように、パパは始終笑っていた。

その笑みはひきつっていたけれど。



「あ、妻は亡くなりましたが、僕は一人じゃないので、寂しくありませんよ！えーと…」


「…一人じゃない？」


「あ、はい。今、二人暮らしなので」


「………え、恋人がいらっしゃるんですか？」



清美さんの直球な質問。

パパは物凄くわかりやすく顔を赤らめた。本当にわかりやすすぎるわ。

恋愛の話しに本当に慣れてないのね。


パパは直ぐに「い、いませんよぉぉ！」と体全体を使って否定をした。



「二人暮らしと言うので…」


「ち、違いますよ！そ、そんな、は、破廉恥な！」


「ぶっ」



わたわたと否定するパパ。

あまりに挙動不審になるパパを見て、清美さんが…初めて笑ったわ。

あら、かわいい。

こんなふうに笑えるんじゃない。

パパって案外凄いかも。

クスクス笑い続ける清美さん。パパは驚いて目をかなーり見開いてるわ。

しばらくすると、つられてパパもパパらしくお花散らして笑い始めた。



「お、面白いですね…先生って…」


「あ、実はよく言われるんです。………娘とか」



ピシリ。









―――娘とか。






…パパ。あなた、なに言ってるの。

ちょっと、待て。

パパ。

あなた、約束、破る、つもり？

娘、って、

なに、はなしてんの、よ。

そうよ、

だれと、二人、暮らし、なの。

約束、は？














「……娘、さん…？」


「あ、はい。実は今、八才の娘と二人暮らしなんです」