僕だけの瑠璃色
「じゃあ行ってくるね。……体調が悪くなったらすぐに連絡するんだよ!パパは瑠璃のためなら仕事なんて放っといて…」


「私は今日も上々よ。そんな要らない心配しないで仕事に撃ち込んで頂戴パパ」





玄関の前でいつものように会話を交わす私とパパ。

パパは私から離れたくないみたい。



ぐずぐずと玄関で立ち止まってまだ外へ出る気配がないの。


あら……もう時間だわ。



早く行かないと本当にパパ遅れちゃうわ。







「パパ、今日もお仕事頑張ってね」



珍しく極上の笑顔を浮かべて言った。


パパは単純だからこれだけで一日ご機嫌なのよ。


案の定、パパはぱあっと顔を輝かせて鞄を胸にぎゅっと抱きしめた。


パパの回りにお花が飛んでるわ。まあかわいらしいこと。






「あは…は…瑠璃に言われちゃ仕事と頑張るしかないなぁ…!よぅーし!パパ今日は気合い入れて頑張っちゃうぞ!!」


「気合い入れはいいから早く行きなさいよ。本当に遅刻するわよ」






ちょっと冷たく突き放しても、今日パパは始終ご機嫌。

ニコニコしながら玄関を軽やかなステップで出た。


そのままパパはマンションの階段を駆け降りる。


笑顔は私に向けたまま、見えなくなるまで私に手を降り続けるパパ。



自然と私もパパを追いかけるの。

階段をちょっと走って、マンションの出口まで出て、

もう見えなくなりそうなパパに小さく手を振るの。





「……行ってらっしゃい、……パパ」




ちょっと、ちょっとだけ寂しいような気がするの。

毎日、パパが仕事に行って、家に私一人。




本当に、ちょっとだけ、寂しいのよ。



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