僕だけの瑠璃色
見えなくなったパパ。


私はあと何回、あの広い背中を見送る事が出来るのかしら。

















「……そうそう、あそこの二階に住んでる広志さん…!」


「ああ…!あの絵本作家の…?」





私が階段を登ろうとすると、ゴミ捨て場からおばさん達の声。

パパのお話してるわ。



悪口じゃないといいんだけど…。







「……大変よねぇ…あそこの奥さん昔事故で亡くなっちゃったんでしょう?………ご不幸ねぇ…」


「…………そういえば…広志さんと…亡くなった奥様の美子さんに……お子さんいらしたわよね?」


「ああ……そういえば…。えーと……確か……瑠璃ちゃん、だったかしら…?……………瑠璃ちゃんもねー…」


「……まだ小さいのに…可哀相だわ。広志さんだって大変でしょうに」









あら、私の名前まで出ちゃってるわ。

どいつもこいつも私達家族を可哀相って言うけど、そんなことないのに。



ママは幸せだったわ。死んじゃったけど、可哀相じゃないの。


私だって……、パパがいるんだから。

パパが、…傍にいるの。












おばさん達は私には階段で立ち止まる私に気付かず、エレベーターで帰って行った。



何なのかしら。すっきりしないわ。

また具合が悪く?





…………そんなわけないか。













パパが帰ってくるまで、お家で大人しくしてなきゃ。

心配かけちゃ、パパも死んじゃうわ。

ただでさえ疲れてるんだから。
















ねぇ、パパ。



早く、早く。















家に帰って、ソファに飛び込んだ。

パパが買ってくれた熊さんを抱きしめても寒い。

心が寒い。

















「パパ……早く帰って来て…」



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