燕と石と、山の鳥
「あれっ?芹緒さん昨日泊ったんだ!」

「え、あぁえぇと、おはようございます」



寝起きの格好で髪も下ろしたまま驚嘆の声をあげる梨里子に芹緒がぎこちなくも挨拶を返す。


「おはよう二人とも~」

ご機嫌な様子で白々しい挨拶をするお袋に返事をしてからもうすぐ食事を終える親父の向かいに座る。


「はよ」

「おう」


短いやりとりだがいつもこうだからいつもどおり席につく。


「おはようございます。昨晩はお邪魔したにも関わらずロクにご挨拶もしませんで申し訳ありませんでした」

「ん?…おぉ、どうせあの時間からじゃしょうがねえんだ。気にしなくて良いよ」


席に着きながらついさっきお袋に返したのと同じ挨拶と、事情合わせのための謝罪をした芹緒に親父がやや面喰ったように一度芹緒を見てから軽く微笑んだ。



「ねぇねぇ芹緒さんっなんでお兄にあんなに可愛いお人形さん貸してくれたの?」

「あらお人形さんなんて借りてたの?」

「………」



梨里子の質問に芹緒が答えるより先にお袋が楽しそうに声を弾ませ、親父が不可解なモノを見る目で俺に目線を送ってきた。


「?紺は黙ってたんですか?」

普通は家族に別段報告するようなことでもないし、下手に説明するのも面倒だった。


「それをご存じだったということは…」

「あ、私は偶然昨日の夜見つけて」

「ってことは、彼女をベッドに寝かせていたのは」

「私かな?そういえば部屋出るときに何となくしたかも…」



そういう事だから親父。
「お前人形を自分のベッドに入れてんのか」って目線を送ってくるのはやめてくれ。



「なるほどなるほど…」

「ねぇ芹緒さん、あのお人形さんお家ですごく大事にされてるんじゃない?」
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