燕と石と、山の鳥
「ですから狗神と言う妖怪は人の怨みに敏感に反応しては山を降りて来て意識を操作するんです」


「へぇ…」





うちの明かりが見えて来ると、「あ、お家着きましたね。それじゃ…」と立ち去ろうとする奴の襟首を咄嗟に掴む。



「んぐぇっ」

「その左腕そのままで帰らせるわけねぇだろ。
二階のベランダに行ってろ。包帯と消毒液持ってくっから」


左腕からはまだ多少なりとも出血している。
ある程度固まってきたせいもあって左腕全体が赤黒く染まっていた。


「いやいやご心配なく…」

「良いから来い!」



なおも来ようとしない芹緒の頭を掴もうと手をかけると、ズルッと硬い物がひっかかる感触。





「…あ」
「へ…?」






手元には鬼面。

目の前には透き通るような肌に理知を秘めた瞳。

美少女とも美少年ともとれる奴と目が合っていた。





「…顔、ちっさ!」

「…ぁ…わ…ぅあぁ…っっ!」






芹緒の形の良い眉がハの字に下がり、白い肌が月光下にもみるみるうちに真っ赤になっていく。



どうやら、本当に照れ屋らしいな……
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