燕と石と、山の鳥
「かっかかかっ返して下さいっ!」


面に飛び付こうとした芹緒をひょいっと避ける。



「返して欲しかったら、二階に行ってろ」




「むぐぐぐぅ〜っ」と唸る芹緒に背を向け、面を持ったまま家に入った。




「おかえり〜…ってあらどうしたの!?」

「待ってる間に寝ちまったらしい」


「あらあらまぁまぁ…」とかなんとか言ってるお袋に梨里子を明け渡して救急箱を持って自室に向かった。





自室のドアを開けると、窓から入る月光の片隅にうずくまるシルエットが見えた。

カーテンを開けると、フードを被った芹緒が体育座りでうずくまっていた。





「腕出せ」
「その前にお面。
返して下さい」


拗ねた口調で顔を上げない芹緒の頭にそのごつい鬼面を被せてやる。
と、即座にフードを外して面を被り直した。



「もー無茶するんですから!
このお面は家に代々伝わってる大事なものなんですからね!」


やっと調子を戻した芹緒の左腕を濡れタオルで拭いて血を落として行く。

…にしても、本当に細い腕だな。




「で、お前の家ってのは一体なんなんだ?」

「あぁ、そうでした。
僕の家は平安時代から続く方相氏の一族なんです」
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