燕と石と、山の鳥
「しかし、妖怪にとり憑かれるにはその当人にも原因がある。
そのままにしたらまた妖怪にとり憑かれる確率はとても高いんです。
だから浅水さん、あなたが必要だった」


「…どうしてそこで俺になる」


「"狐憑き"には言霊の力があります。
人が狐に騙されるのはその話術や言霊による力の影響です」




そこまで聞いて、やっと合点が行った。




「………だからその筋の影響を強く受けてる俺に声をかけたってわけか」


芹緒はこっくりと頷くと、呟くように零す。





「魔を斬ったって、人が救われなかったら…なんの意味もありませんから」







その声が笑っているようで、淋しそうで、儚げで……



俺は思わず、包帯を巻く手に力がこもった。



「あだっ!?」

「血…血止まっちゃいますよ…浅水さん…!」と訴える芹緒に構わず、早口で言う。




「付き合ってやっても良いぜ。
その仕事」

「…へ?」



しばらくの沈黙の後、ぐいっとその鬼面が俺の目の前に迫る。

結構、迫力あるな…



「本当ですか!?
良いんですかっ!?」

「…怪我させちまった借りもあるしな」
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