燕と石と、山の鳥
駅員が恐る恐ると言った感じで近づいて来る。
「…違う」
俺が辛うじてそう言うと駅員はびくりと身をすくませる。
しかし…
「そうだ!」
「私も見た!」
「俺も見ていたぞ!!」
口々に周りの大人達が興奮気味に叫び始める。
これ、もしかして信じていただけない流れか…?
また身内呼び出しかな…
人が一人死んでるから裁判か…
内心で舌打ちをする俺の耳に、知った声が聞こえて来た。
「彼は落とし物を渡そうとしたんだよ」
よく通るその声が響いた瞬間大衆の目がハンカチを今だ握る俺の手元に集中する。
しかし、疑いの色がなくなったわけではない。
「…紺、言霊ですよ」
すぐに俺の近くに回って来たらしい芹緒が小声でいう。