燕と石と、山の鳥
「それより浅水くん、今朝のニュース、見た?」
「あ?…あぁ、西高の女子が殺されたって言う?」
俺の返答に相模は手入れの行き届いていそうな髪を揺らして頷く。
「殺されちゃってるのってすごく可愛い子ばっかりみたいだよ?
それにしても怖いよね…
私、最近部活帰り怖くって…」
長い睫毛を伏せがちにしてその瞳を不安げに揺らす相模につい「俺が守ってやるよ!」とか口走りそうになったその時。
「紺おにーちゃんつーかまーえたっ」
「……………はぁ?」
この場所にどうしても似合わない声と衝撃に思わず言葉を切って足元を見ると、現代っ子にはとても見えない子供がいた。
おかっぱにぴょこんとてっぺんで結ばれた黒髪。
白粉を塗った真っ白い顔。
目頭と目尻、鼻と口だけに塗られた朱。
そして何より妙だったのはその服装。
平安時代の公家の子供が着るような白い水干に藤色の袴という童水干姿(ワラワスイカン)なのだ。
「次は紺お兄ちゃんが鬼だよーっ」
その子供は疑問に固まるその場の空気なんて全く気にかけず担任の脇を摺り抜け走って行く。
迷惑そうにこっちを見た担任に軽く舌打ちしてとりあえずあとを追う事にした。