燕と石と、山の鳥
俺が人込みに向かって行くと空気抵抗の実験みたいに人込みが割れて行く。


小さな白い影はひょこひょこと軽快に前を行きついには屋上のドアに姿を消した。





屋上に出ると、生温い風が顔にあたる。
その先にいたのは、さっきの子供ではなく…




























「はじめまして。
浅水 紺くんですね?」












朝に見かけた縁日の狐の面を付けた奴だった。

その声は声変わりの前の少年の声みたいでもあり、大人と子供の間を行き来する少女のようでもある。








「あぁ?そうだけど…ここに変な格好したガキが一匹来なかったか?」


辺りを見渡して見るが、それらしい影は何処にも見当たらない。


「あの子には君をここへ連れて来る手伝いをお願いしたんです」

「は…?…」


その手には、風にそよぐ人型の「童子」と書かれた紙。
まさかな、と、常識では考えられない想像を打ち消す。



「小さい頃から、何か悪い事があると犯人扱いされて来たんじゃありませんか?」


互いの間に3メートルくらいの距離を置いているのに、金縛りにあったようにそいつから意識がそらせない。

突っ掛かってくる奴らのような敵意や殺気は感じられないが、俺より20センチは身長の低い小柄なそのナリをしたそいつからはそこら辺のワルなんかは及びもつかないような圧倒されそうな"何か"があった。
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