燕と石と、山の鳥
「由緒ある家系で…」






爺さん婆さんは会う度にそんな事を言っていた気が…











「神棚には稲荷…」








小さい頃から気になって親に聞いた事もあるけど…



返答も出来ずにいる俺に、得体の知れないそいつはゆっくり俺に近付いてくる。




恐怖感なんかは、ない。

そもそも俺はキレた時の両親以外に恐怖感なんて感じた事はない。

そういった所を度胸があるように見られて余計誤解に輪をかけるようなことになっている。
非常に不本意ながら今や押しも押されぬ不良の仲間入りだ。






「ご両親は詳細を伏せられているのでしょうね」



いつの間にか俺の目前まで来た狐面の目の部分に開いた細長い穴の向こうに真っ直ぐにこっちを見上げる瞳が見える。





「"忌み物筋"の家系だと言う事を」

「……てめぇ、何なんだ?…」






やっと声を出した俺に「へ?」と素っ頓狂な声を上げ、緊張していた俺も拍子抜けに奴をまじまじと見た。



「あー…そうだそうだ。
自己紹介がまだでしたね」



すみませんすみませんと軽く言うそいつに段々肩の力が抜ける。












「泰納 芹緒(タイナ セリオ)と申します。
見知り置いていて下さいね」
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