巡る巡る
あたしの正面に立つ高山君。
何となく会話はなくて
目の前の彼の緩く結んだネクタイあたりをじっと見つめていた。
夏休みの後、新学期が始まって、彼に彼女が出来たって話は聞かなかった。
あたし達の距離も
以前と変わらないまま。
何となくモヤモヤとしたものが、あたしの中に残っていた。
その時、
グラッと車内が大きく揺れて
咄嗟につり革を掴む手に力を入れた。
「………っ!?」
その揺れの直後、
ゾワっと身体中が鳥肌立った。
太股あたりに感じる違和感。
人の手のような感覚。
……やだっ…。
何かの間違いかもしれない、
そう思って場所を少しずれてみる。
しかし
その感覚は消えることもなく着いてくる。
それどころか
その感覚が、
上へ上へと登ってくる。
そして
それは
スカートの中に侵入した。