巡る巡る
「……相沢っ!」
廊下に出ようとしていた相沢を呼び止める。
思ったより声が響いた。
「…え…、高山…君…?」
「……悪いけど、ちょっと相沢借りていい…?」
「えっ!?あ!うん!どーぞどーぞ!」
「ありがと。行こ?相沢。」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
やはりあのキスを気にしているのか、どぎまぎした様子の相沢。
とりあえず
一緒にいた友達に断って、
混乱している相沢の手をとって歩きだす。
俺が相沢の手を握ったことで、教室にいた生徒から驚いたようなどよめきがおこった。
だけど今はそれどころじゃない。
「…た…高山君…?
…どうしたの……?」
俺に手を引かれたまま何も言わずについて来ていた相沢が恐る恐るといった感じで口を開いた。
「…え…、あー…と。
…とりあえず…、
今日さ、一緒に帰んない?」
相沢を呼び止めることに必死で、この後のことを考えていなかった俺は思いつきでこんなことを口走った。
「…うん…。いいけど…。
……あの…、…手を……」
「……え!?あ!わりぃ…。」
言い難そうに俯いたまま呟いた声に、
無意識のうちに強く握っていた小さな手に気づき、慌てて勢いよく離した。