巡る巡る
ざわめく教室。
女子の高い声が賑やかに響き渡る。
年に一度のバレンタイン。
みんな持参のチョコレートをもって、彼氏や友達に配っている。
恒例のこの行事。
あたしも去年までは何の気なしに参加していた。
だけど今年は違う。
鞄の奥底にしまわれた小さな箱。
水色のラッピングを施した
所謂“本命チョコ”。
その存在が、あたしの気持ちを重苦しくしていた。
「蘭く~ん!チョコあげる~!」
相変わらず凄い人気の高山君は、さっきから色んな人から貰いまくってる。
他クラスの子や後輩の子まで来てる。
……どうしよ…。
予想はしてたけど、これじゃあ渡す時がないよ。
あたしもあんな風にフレンドリーな感じで渡せたら…苦労しないだろうな…。
教室の出口のところで女子に囲まれている高山君を見て、はぁとため息をついた。