刹那の憂い(セツナのウレい)
「カラダ、動かない」

あんまり彼を見ないように言う。

と、いきなり肩を抱かれた。

あたしは、思わずその腕から逃げた。

イヤすぎて、反射的に。

「触るな」

「成元さんて自意識過剰」

うるさいわ。

自己防御だ。

「それか、本当なんだ。

成元さんって、

男キライだっていうウワサ」

ウワサ?

店の中での、かな。

そんな狭い世界でのことは

”ウワサ”じゃなくて、

陰口っていうんじゃないかな。

「別に、キライな訳じゃないけど」

でも、好きでもないかもな。

ちょっと思う。

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