刹那の憂い(セツナのウレい)
あたしは、

赤根の手を、

思い切り振りほどいた。

けれど、

その腕をがっちり捕まえる。

「迷惑なので、もっと人目から離れませんか?」

半分無理矢理、

店から遠ざける。

ついでにそのまま、傍の公園まで引きずり出す。

そこで、ぱっと手を離す。

ついでの、店員の立場も放り出す。

「それで?」

敬語も捨てて、あたしは彼女に向き直る。

「ヒデタダを返して」

「って、刹那は、もういいの?」

「刹那・・・」

赤根はその目から、

大粒の涙を流す。

不覚にもドキッとしてしまった。

こんな綺麗な顔して、

泣かないでほしい。

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