刹那の憂い(セツナのウレい)
「離して」

「もう、離してる」

「じゃあ、離れて」

ヒデタダは、わざと腕を曲げ、あたしとの距離をつめた。

ものすごく、不愉快なんですけど。

あたしはニラみ上げた。

「何で、逃げようとするんだ?オレから」

コイツ、バカなんじゃないだろうか。

逃げ出したいくらいに、嫌いだからに決まってる。

けれど、今、それ言って、神経を逆なでさせるのは賢くない。

「こういうこと、するからでしょう」

一応抗議の声を上げる。

「オレが、キライ?」

嫌わない理由が見当たらない。

あたしは、苦しそうに、呻いた。

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