刹那の憂い(セツナのウレい)
ああ・・・やっぱり。

「悪いけど、あたしに手を出さない方がいいよ。あたし、刹那の親友なんだ。ただの」

あたしは言った。

女はハッとしてあたしを見る。

「刹那、友達思いだから、トモダチのあたしに、こんなことしないほうがいいと思うよ」

何だか悔しそうに睨みつけてくる。

それから、あたしをつかんだ手を離す。

「くっそ」

言い捨てて、行ってしまう。

「・・・刹那、戻らなきゃ」

「うん。ごめんね、紫苑ちゃん。あの、終わるまで、いてくれる?」

あたしは返事しなかった。

「みんなが怒るよ!?」

刹那は、じってあたしをみると、振り切るように、前を見た。

ドアとは違う方に走り出す。

あたしはそれを見送ると、壁にもたれた。



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