刹那の憂い(セツナのウレい)
サヤというのは母上の名前だ。

そのとおり、彼女は艶かしい美女である。

どうせあたしは彼女に似ていない。

あたしは露骨に嫌な顔をしてやった。

「あ、ごめん。

そういう意味じゃなくて。

キリッとした、可愛い子だなって」

「顔が困ってますよ」

「え?いや、これはお世辞じゃなくて。

まあいいや」

小野田はふっと笑う。

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