スローボール
平静をよそおって、クールに聞いてみたつもり。
だけど無理だ!
だって、窓が開いてるから、先生が窓から上半身をこっちにつきだしてるんだもん!
近いよ、先生!
その状態でギロッとあたしをにらむと、
「こいつ、授業中なのに、窓の外ばっかりみてたんですよ」
と、世界史の先生に告げ口をした。
そして、今度はいたずらっ子みたいに、笑って
「お前、俺にみとれてただろ?」
と言うと、持っていたボールペンで私のあたまをこづいた。
やばい。
あたし、今ぜったいに顔が真っ赤っかだ…。
なんでわかったの?
先生を見てたこと。
否定することもできずに、ただ真っ赤になるしかなかった。
あぁ…
あたし、バレバレじゃない?
みんなに先生を意識してますよって、言ってるようなもんじゃない?
クラスのみんなが、どっと笑うと同時に、チャイムが鳴った。
先生は、
「集中しろよ」
って言ってもう一回だけ、あたしの頭をたたいて行ってしまった。