スローボール
掃除の時間。
いつもは中庭そうじだけど、雨が降ってたらできない。
ひまつぶしに、
そこらへんに落ちていた、たわしを拾って、
「恵美〜!くらえっ」
なんてふざけて
たわしを投げたら、
たわしキャッチボールが始まった。
ふたりで夢中になって笑いながら投げ合っていると、恵美が取り損ねたたわしが…
「…やばっ」
生徒にぶつかりそうになったのをキャッチしたのが、先生だった。
怒られるのを覚悟していたのに、先生は、真顔でたわしを投げ返してきた。
あたしと先生の距離は、2メートルくらいしか離れていなかった。
キャッチして先生の顔をみると、少し笑ってるように見えた。
そしてなぜかあたしは…
先生に、また投げ返したんだ。
どうしてか分からないけど、先生は怒らなかった。