お と う と 。
はじめまして、おとうとさん。
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あたしにはお母さんがいない。
小さい時に交通事故で死んでしまってから、あたしの家族はお父さんだけだった。
授業参観日にも、運動会にも、あたしのお父さんは仕事でいなかったから、あたしにはお母さんを探してきょろきょろすることなんてなかった。
あたしにはお母さんの顔なんて実際の記憶の中ではもちろん覚えてなくて、あたしの中のお母さんの記憶は、アルバムにある写真に写っている、笑っているお母さんだけだった。
でも、お母さんがいなくてさびしいと思ったことがない。
少しおかしいのかもしれないけれど、あたしにはそれが普通で、あたしの家族はお父さんしかいない、それが事実だったし、当たり前だと思っていたからだ。
だけど、それは今日、あっさりと崩れたんだ。