お と う と 。


智也君はそう返事をして、ようやくあたしの買ってあげたドリンクに手をつけた。


ふたを開けて、中身を一口飲む。


そうして、


「……なんて呼んだら、いい」

「はい?」

「呼び方……。なんて呼んだらい?」


あたしは思わずきょとんとしてしまった。しかしそれでも智也君を見つめて、ちょっとだけ唸って、


「姉さんでも沙耶でも、なんでもいいよ。智也君の好きに呼んだらいい」


智也君はちょっと困ったみたいだった。


眉を寄せてしばらく黙りこくった後に、「じゃあ、」と恐る恐る、


「沙耶って、呼ぶ」


「判った」

「沙耶も、……俺のこと、智也でいい」

「いいよ」


にこりと笑って頷くと、智也君……智也も、口音だけちょっとゆるませて、笑った。


それがすごくきれいで、かわいくて、おもわずドキッとしてしまったのは、ちょっとだけ秘密だったりする。




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