お と う と 。
何言ってんのよ―と言いながらも、結衣は黒板にがりがりと「平日に遊園地」とかいている。
それからさらに提案を求めると、ぱらぱらと手があがり、彼らが告げる提案を、結衣はさらさら書いていった。
私は何も考え付かなくて、どんどん増えていく候補を眺めていた。
と、トントン、と肩をたたかれ振り返る。
「なあ」
そう声をかけてきたのは、後ろの席に座っていた日野くんだった。
彼は、大学にはいわゆるスポーツ推薦で入ってきた人種だ。
彼がその才能を発揮しているのは、剣道。しかもこの大学内でも5本指に入るほどの腕前なんだとか。
なのに、彼は掛け持ちとして、このサークルに入り、しかも休まずに活動に参加しているから不思議だ。
あたしとしては、部活の方にも顔を出さないといけないんじゃないのかなあ、なんて思うのだけれど、それはプライベートなことだから言ったりはしない。
「なあに?」
「安部さんは、何か考えてる?」
「……ううん、特に何も」
「なにも?」
「うん。なんか、考えてたことは出尽くしちゃった感じするしね」
そういってあたしは黒板を見る。
黒板は、結衣の字で真っ白に染まっていた。