お と う と 。


「このくらいでいいかな」


結衣はそう言って、ようやくチョークから指を離した。


「じゃあこの中から実行不可能なものを除去していきましょ。まず、この平日で遊園地っていうのは却下ね」

「いやいやいや、いけるって」

「いけるわけないじゃん。他の人の都合もあるんだから、そこら辺考慮して!あくまで土日でもできること!」


再び意見が飛び交っていく。日野君がまた、


「実はさ、来週の日曜、練習試合なんだ」

「試合?」

「試合っていうか、指導っていう方がいいか。
 俺さ、大学にスポーツ推薦できたろ?だから、元顧問に可愛い後輩に指導してくれって頼まれちゃってさ」

「ふぅん」

「でさ、その日、時間無い?」

「時間?うーん……昼間なら時間あるかな。夜までかかると、ちょっと厳しいかもしれない」


確かその日の前日はお父さんと奈津美さんが籍を入れる日だ。大安だったから。

いろんなことに結構疎いくせに、こういうことには結構目ざとかったりするのだ、うちの父さんは。

だから、土曜から智也君たちの引っ越したのために、荷ほどきをしなくちゃならなかったはずだ。

あたしたちの家は一軒家で、奈津美さんたちはマンション暮らし。とくれば、どっちで暮らすかは目に見えていたし。

用事があるにしても、夜には帰って手伝いをしなければならないだろう。

日野君はそれを聞いてにぱっと少年のように笑った。

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