お と う と 。
「……帰ってたんだ」
「うん。さっきね。奈津美さんがいるからびっくりしたよ」
「……そう」
会話終了。
だけど、智也君は動こうとしない。
あたしもずっと彼の前に立っているのは気まずいので、少し困った。
ちょっとずれて、先に降りるねと言おうかなあなんて思っていると、智也君が、
「母さんは忙しいけれど、俺、学校終わったら2時間くらい、ここで片づけとかしてるから」
こう言って来た。
「え?」
よく判らないので、こてん、と首を傾げると、智也君はちょっと拗ねた顔であたしを見る。
「ただいまくらい、ちゃんと言えよ」
「……うん、ごめん」
調子抜けしたあたしは、そんな間抜けなことしか言えなかった。