お と う と 。
それから、あーそっか、と納得する。
奈津美さんにこの家であった時に絶句したのは、
奈津美さんが家にいた事ではなくて、「お帰り」って、言われたからだ。
あたしは少し笑って、「ただいま」と智也君に判るように呟いた。
「お帰り、姉さん」
そう言った智也君がそっぽを向いて、すたすた、階段で下へ降りてしまう。
けれど、その耳が真っ赤だったから、それに「姉さん」って呼ばれたのがちょっと嬉しかったから、あたしは、ほんのちょっとときめいてしまったのだけれど。