お と う と 。
その事実を知ってからだと、日曜日はとても速かった気がした。
バイト先には、店長に拝み倒して何とか休ませてもらった。
いきなりだったから、人が足りなくて今日は大変だろう。
本当に申し訳なく思った。
勿論、そんなことはお父さんには関係なくて、もともとそんなこと考えてもいなくて、彼は、ホテルのロビーであたしが今からあう継母になる予定の人と、義理の弟になる男の子のことしか考えていないようだったけれど。
もちろん、あたしもそのことに関して何も考えなかったわけじゃない。
むしろ、ものすごく意識していた。
今までお父さんと一緒に暮らしてきたし、その間、家事はあたしが全部やってきたから、あたしにはお母さんという存在を知らなかった。
もちろん知らないのは仕方ない。けれど、新しく増える家族はそれだけじゃない。
弟も増えるのだ。
下の子なんて、しかも、男の子だなんて。
何を話したらいいか分からない。どう接したらいいか、わからない。
あたしはそのことで、ずっとずっと悩んでいた。
そしてその二人が現れたのは、約束の時間になってちょっと経った時だった。
「ごめんなさい義孝さん、少し遅くなってしまって」
綺麗な声がして顔をそっちにむけると、そこにはとても綺麗な人が、とても似合っているスーツ姿で立っていた。
義孝さん、と呼ばれたお父さんは立ち上がっていた。
「いや、そんなに待っていないよ。……先に紹介しようか。この娘が私の娘の沙耶だ。
沙耶、この人がお母さんになる、」
「小野奈津美です。性は、再婚したら変わってしまうけどね」
ちょこっと肩をすくめてそういう彼女は、あたしから見ても本当に素敵な人で、ああ、お父さんが好きになるのも仕方ないかなあ、なんて思ってしまった位だった。
とにかく、第一印象は素敵で、すごく好感が持てた。