お と う と 。


ランチが終わると、お父さんと奈津美さんは話があるからと言って、あたしたちをホテルの外に追いやった。


話があるのも本当なんだろうけれど、きっと、たがいに話をしていないあたしたちをもっと仲良くさせようという魂胆があるのだろう。


そのくらい、あたしにもわかる。


何をするわけでもなく、あたしは智也君の対応に早速困った。


「えーと…智也君だっけ。どうしよっか」

「何が?」


帰ってきた声は、意外にも優しかった。


あたしはちょっとだけびっくりして、でもニッコリ笑いながら、


「どこか行きたいところ、ある?多分お父さんたちの話し合いは時間かかると思うから」

「特にないよ」

「じゃあ……あそこの公園にでも行く?それとも、ホテルに戻って上にあるケーキバイキングに行くか。

此処のケーキ、美味しいんだよ。あたしの友達から聞いたんだけどね」


智也君を見上げて、そういった。


「ふーん」


気のない返事をして、智也君はあたしを見つめた。


年下だろうとなんだろうと、やっぱり綺麗な子はそれなりに直視しがたいものがあって、あたしは必死で智也君から目をそらさないように頑張る。


その智也君は、しばらくしてから、ちょっと意地悪そうな顔つきをしてあたしに言ったのだ。


「まだ食べるの?昼飯食ったばっかなのに」

「うっ」

「太るよ」


……痛いところ突かれた。


言葉に詰まったあたしの顔が面白かったのか、智也君はニヤニヤしながら「公園がいい」と言った。


なんか、意地悪な子だ。

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