お と う と 。


ホテルの近くにある公園は、自然公園の形をとっていて、木が影を作っている下にあるベンチは、なかなかに快適だった。


そこに、買ってきたジュースの一本を智也君にあげて、並んでそこに座る。


いつも飲んでいる紅茶を一口飲んでから、智也君に話しかけてみた。


「智也君は今、高校どこ?」

「……東邦高大付属」

「あ、高校の時聞いたことがあるー。部活やってるの?」

「うん」

「どこ?」

「剣道部」

「あ、剣道やってるんだ。にしても、東邦の剣道部ってすごいよね。あそこ、県大会の常連だって聞いたよ。去年だっけ、全国大会のベスト4じゃなかった?」


本当にすごいなと思いながらそう言うと、智也君はなぜか顔をそらして「うん」と答えた。


部のことにはあんまり触れない方がいいのかな。あたしはそう思って、話題を変えた。


「剣道はいつからやってるの?」

「小学校。低学年からだけどいつからかははっきりと覚えてない」

「へーえ。長いんだね。あたし一つのことが長続きしないから、尊敬するなあ」


そこでようやく、智也君があたしが買ってあげたペットボトルのふたを開けた。中身を一口ごくんと飲む。


「アンタは?」

「あたし?」


いきなり話を振られたので、少しだけ動揺した。


智也君は頷いて、少しだけ補足する。


「アンタは、なんかやってないの」

「んー。やってない、かな。あ、でも今サークル入ったか」

「何の?」

「お遊びサークルだよ。皆で散歩したりとか、ドッジボールしたり、ドライブとか旅行とか。

友達だけで作ったの」

「ふうん。楽しい?」

「まだ、数回しか活動したことないけどね。楽しかったよ」


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