破天コウ！

　地下通路で迷ったあの日のように、そろそろ八分泣きに達しそうになりつつあったおれは、そんな中二病の症例のうちの一つを思い出しながら、根拠の全くない自信を取り戻し、しっかりと前を向いて歩いていた。

「あの……貴方、T2の方ですか？」

　背後から、可愛らしい声がした。

「ええ、そうですよ！」回れ右のようにキビキビとした動きでおれは振り返った。「本日付けでT２に配属されたのは何を隠そうこのボクです！」

　そこにいたのは、茶髪のウェーブがかったショートボブ風の髪型の、目の大きな美少女であった。ヒールを履いてはいるもののそれでも背丈は低く、表情にも何処か幼さが残っている。ド派手な紅いスーツが、彼女の可憐さを引き立たせている。

　いやはやしかし、今日は一体何人の美人と巡り合うのだろうか。

　おれは、右手の人差し指を自身の鼻の前でピンと立たせて自分的にはカッコを付けているつもりで静止し、彼女を見つめた。

　しかし、すぐにおれは視線を逸らしてしまった。美少女と視線を交わしあうなんておれには出来ない。このチキン野郎！

「あの……私も新入生で、T2の黒木ミリっていいます。その……道に迷ってしまって……よければ、ホームルームの教室まで私も連れて行ってくれませんか？」