破天コウ!
 その後も、特に中身も無い雑談は続いていたのだが、ほんのり裏社会の風味が漂っていそうな、見た目の怖い上級生に静かにしろと言われ、そこでおれたちの雑談は強制終了された。

 そのままの流れで、名簿委員(クラス全員の連絡先なんかをまとめる係らしい)なんかの係を決めたり、地球工学部(おれが入った学部だ)はこんなことをしますよーみたいな簡単な説明があった。

 大学生にもなって、係があるっていうのがなんだか笑えた。

 こんな時、つくづく思う。おれはなんて学習能力の無い人間なのだ、と。もはや、嘆きたくなる程である。

 つい先程、人の話を聞いていなさすぎて凄まじく遭難したにも関わらず、上級生が前で話していることに、おれは殆ど耳を傾けていなかった。

 上の空、というやつかな。おれはただ、視線を動かしている。

 まず始めに見たのは、左斜め後ろの席に座っている、例のブレザー型制服を着た黒髪の女の子だった。

 視線を送っているのを気付かれないようにそちらを向いてみると、彼女は真剣な表情で、今時珍しく感じられるシルバーの携帯電話の画面をじっと見つめていた。

 どこの機種だろうか、なんて、どうでもいいことに考えを巡らせながら彼女を見ていると、視線に気付いたのだろうか、彼女は綺麗ではあるがどこか不機嫌そうにこちらを見た。
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