第七世界
メニューの文字がよく解らない。

ドイツ語らしいのだが、ふりかなが書かれていない。

簡単なのは解るが、複雑なのになると解らないのだ。

何て優しくない店なんだ。

ウェイトレスにコレをと指を指すのも、格好よさを感じない。

ドイツ語を勉強しておくべきだったか?

しかし、『Frieden』に来るためだけにドイツ語を習うのも無駄だ。

普段から使わないんだよな。

「決まったー?」

「早速頼もう」

「おいおい、俺の了承は得ないのかよ」

「どうせドイツ語が読めないんだし、君にとって高級料理は何を食べられてもいいんだ」

「決め付けるなよ」

確かに、的を射すぎてどうしようもない。

「じゃあ、これで」

「当店オリジナルの『Edelweiss』だねー。解ったよ」

エーデルワイスといえば、映画の曲にもなっていたな。

というか、簡単じゃねえかよ。

「まあ、いいか」

二人も決まっているらしく、ウェイトレスを呼んだ。

「コレとコレとコレ下さい」

ティーナさんは、俺の恐れていた事を軽々しくやってのけた。

「かしこまりました」

ウェイトレスが注文された物を機械に打っていく。

「メニューをお下げします」

大きなメニュー表を下げて、礼をした後に去っていった。

「楽しみだねー」

「ティーナさん、そんなにお腹空いてたんだ」

「うん、おいしそうな物が出てくるといいねー」

「ここに来るのは初めて?」

「そうだねー、いつもは楓の料理をご馳走になってるかなー」

楓の料理は美味いから、ティーナさんも満足しているんだろうな。
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