第七世界
ウェイトレスが料理を運んでくる。

楓とティーナさんの料理はコートレットにクネーデルとかいう物らしい。

コートレットは仔牛や豚の背骨の部分の肉料理で、クネーデルは芋団子である。

俺のは何か、白い花を形作られた料理で何を使っているのかは知らない。

「いただきまーす」

口の中に入れると甘酸っぱさが広がり、肉の触感が抵抗を生み出す。

「美味い」

高級料理を食べた事がなく疑っていたのだが、癖になりそうな味である。

「生きてて良かったって感じるよー」

美味しそうに食べて笑顔になるティーナさんが年上には見えない。

楓は口をつけていない。

「食わないのか?」

「君たちが食べた後でゆっくり食べよう」

「えー、楓も一緒に食べようよー。皆で食べた方がおいしいよー?」

「君たちと出会う前にラーメンを6杯食べてね。すぐお腹が空くから気にせず食事を続けてくれればいい」

「楓ー、何なら私が」

「ティーナ、その癖は直すんだ」

「うん、ごめんねえ」

水にも手を付けようとしない。

顔色が悪いわけでもなく、汗をかいているわけでもない。

至って元気に見える。

気にしても仕方がないので、俺とティーナさんは食事を続けた。

「ティーナさんは、どこの病院に勤めてるの?」

何も話さないのも賑やかさに欠けると思い、ティーナさんの事を聞いてみる。

「えーっとねえー、神崎総合病院だよー」

ティーナさんと同じ苗字の病院だ。

「ティーナは長の娘だ」

神々しいオーラが出ていたのは、高い位置に居たからなのかもしれない。

「あれ」

料理も後一口に差し掛かったところで、目の前にいる楓が霞み始める。

次の瞬間、暗闇の中へと落ちていった。
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