第七世界
突如、ステージを照らすような照明が一つの場所に降り注ぐ。

明かりの下には、一人の男が立っていた。

「皆さん、Guten Morgen(おはようございます)」

よく見れば、銀髪オールバックのフォーマル男であった。

俺に菊の花を渡したのと同一人物か。

「今宵は私の屋敷にお集まりいただき、Danke schön(ありがとうございます)」

礼儀正しく一礼するが、やっている事は拉致監禁に近い。

「あんた、一体何様!?さっさと帰せよ」

じゃじゃ馬らしき女性が、男の下へと歩いていく。

「今からお楽しみが待っていますので、静かにしていただけませんか?」

「ふっざけんな!これから彼氏と」

銀髪は女性の台詞を途中で遮るかのように赤い目を見開き、腕を横に振るって首を跳ね飛ばした。

「え?」

女性自身、何が起こったのかは解らない。

ただ、文句を言う事ができなくなり、首のあった位置から血が勢いよく吹き上げた。

しばらくすると、力なく地面へと倒れてしまう。

「きゃああああ!」

この世の物とは思えない出来事を見てしまい、悲鳴が一斉に上がった。

ビデオで見る事はあったが、生で見ると気分が優れなくなってくる。

しかし、ティーナさんは冷静に物事を観察しているようだ。

「Be quiet!(静かにしなさい)」

何故か英語で叱り付ける。

効果的なお叱りは皆を芯から恐怖させ、黙らせた。

「騒がしくされますと、彼女と同じ結末を辿りますよ」

死にたくないのは皆同じで、一言も口から発しようとはしない。

更に言えば、顔から血の気が引いている。

「よろしい」

白い布で手から血をふき取り、爽やかな笑顔を見せた。
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