第七世界
「まずは自己紹介をしましょうか。私、アルトゥール=アルトマンと申します。アルとお呼びになっていただいて構いません」

俺からすれば名前などどうでもよかった。

この場所から出て日常に戻れるならば、幸せな事この上ない。

「何故、私があなた方を集めるような真似をしたか。それは、女性との鬼ごっこがしたかったからです」

アルトゥールは本気のようである。

「仕事をする毎日では楽しみがありません。鬼ごっこでもして気晴らしをしなければ、息が詰まってしまうんです」

わざとらしく疲れた顔をしてため息をつく。

「あなた方もスリルな出来事があると生きている実感を持てて面白いと思いましてね」

理不尽すぎる理由で俺達は殺されるかもしれない。

「見つからずに店から出られたのならば、その方の鬼ごっこは終了です。簡単でしょう?」

逃がすつもりはなさそうだぜ。

だが、高校のときのようにでしゃばって前にでれば死んでしまう。

「さあ、今の内に逃げてください。3分目を瞑ってあげましょう」

目が完全に慣れているおかげで、両扉のドアの位置もわかる。

我先にと、女性客はドアへと走っていく。

1分後には、ほとんどの客がホールから出て行ってしまった。

「ティーナさん、離れず行動しようぜ」

「そうだねー。こんな時は恭耶君に頼っちゃうよー」

手を握ってくるが、汗一つかいていない。

暖かく、柔らかさが伝わってきたくらいである。

俺がティーナさんに頼ってしまいそうだ。

俺達は出口から出ると、洋風の廊下になっているようだ。

外に繋がっている窓は鉄格子によって出る事が出来ない。

「えっとー、どこ出口なんだろうねー?」

「じゃあ、右に行こう」

地図がない以上は、どこに行っても同じような気がする。

ただ、来た場所は覚えておいた方がいいだろう。
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