第七世界
「どっちにいったらいいのやら」

楓は廊下を歩き続けていた。

違う場所を歩き続けているのなら進展はあるだろう。

しかし、彼女は同じ場所を巡っていたのだ。

それを繰り返す事、数十分。

「何とも面妖な館だ」

楓は方向音痴ではないが、時に大きなドジを踏む事があるのが玉に瑕だろう。

「はあ」

自分の過ちに気付き、徒労感に襲われる。

「彼らは逃げてる途中か」

立ち止まり、廊下の窓から外を眺めた。

外は土砂降りの雨となっている。

「今のままでは館の主は倒せやしない」

ため息をついた後に、再び歩き始める。

彼らをダシに使った事は後で何とでも言えるだろう。

だが、彼女が行動を起こさなければ、誰も勝ち目はない。

彼女とて、人の心を持つ者。

良心の呵責は存在し、囮に使った彼らに及ぶ被害を最小限に抑えたかった。

だからこそ、目的の物を早く見つけたい気持ちはあるといえよう。

彼女は急ぎ足になりながら、暗闇の奥へと消えて行く。
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