第七世界
広間から距離が開いたが、迷った。

元より出口へ通ずる道など解らないわけで、迷うのも当たり前の話だ。

そして、今も女装のままだ。

中途半端に解くと逆に気持ち悪いだろう。

しかし、歩き続けているせいか、疲労の色が見える。

それに引き替え、ティーナさんは平気そうな顔で歩いている。

女性の前で格好悪いところは見せられないとはいえ、足がパンパンだ。

運動不足だったということか。

「同じような風景ばかりが続くな」

本当に出口が存在するのかわからない。

何かの罠にはまって、迷宮に陥ったのではないのか?

「そうだねー」

俺の手を握っている隣のティーナさんは笑顔で答えた。

「そうだねーって、このまま出れなかったらどうするんですか!」

「大丈夫だよー。焦らず行けば、きっと出口に辿り着けるよー」

全くもって、根拠がない。

ティーナさんの性格からすれば、多少の時間など気にならないのだろう。

「はあ」

下を向いて歩いていると、前にある何かに頭をぶつけた。

「いってえ、何なんだ?」

少しの事でも疲労に拍車をかける。

顔を上げると、大きな木の扉があった。

扉が開いている?

「恭耶君、痛くなかった?」

「少し痛かったかも」

「じゃあ、ちょっと待ってねー」

ティーナさんは俺の額に手を置いた。

しかし、咄嗟にティーナさんの手を取る。

「どうしたのー?」

「また力を使うつもりなんでしょ?」

「恭耶君痛そうだったしー」

「これくらいすぐに直ります。その力は命に関わるから、ちょっとの事での使用は避けて下さい」

ティーナさんの手を静かに下へと下ろした。

「心配させてごめんねー」
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