第七世界
「解ってくれたらいいんです。それより、手は痛くなかったですか?」

「痛くないよー。手からも恭耶君の気持ちが伝わってくるよー」

「よかった」

照れ隠しを見せながら、開いた扉の中を覗こうとすると茶髪ロングの女が部屋の中から出てきた。

「どうかしたんですか?」

よく見ると料理を運んできたウェイトレスだ。

彼女もまた笑顔である。

俺は驚いた。

扉の中から出てきたという事は、アルトゥールと係わりがあるのか。

「く、ここは逃げるしかない」

ティーナさんを連れて逃げようとしたが、動こうとしない。

「何やってるんですか!早く逃げましょう!」

「でもー、この人、館の案内してくれるんじゃないかなー?」

「いやいや、部屋の中から出てきたんですよ?明らかに危険なニオイがしてるじゃないですか!」

アルトゥールと同じ力があるとすれば、一たまりもない。

「坊やは焦りすぎじゃない?隣のお姉さんを見習ったら?」

「ふざけんじゃねえ!お前の仲間は人を簡単に殺してるんだぞ!」

「仲間とは言ってないのに、決め付けるなんて頭悪い」

嫌悪感を露骨に見せている。

「恭耶君、その考えは早計だよー。あの人と同じ考えではないかもしれないよー?」

「でもさ」

「もしかしたら、バイトが終わって、帰るところかもしれないよー?」

俺が間違っているのか?

だけど、目の前の女は怪しすぎるんだよな。

「解ったよ。今だけは信じる」

「じゃあ、部屋の中で話しをしよ」

入ることの出来なかった、未知の部屋へと入ることができた。

「眩しい、な」

廊下とはまるで雰囲気が違う。

廊下が田舎なら部屋は都会、それくらい大差がある。

ベッドや棚はメルヘン使用で、生活感が溢れていた。
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