第七世界
この見た目でメルヘンチックを気取ってるなんてな。

「坊や、さっきから口に出てるんだけど」

「本音でぶつかりたかったんだ」

「嘘にしか聞こえないし、言い訳は男らしくない」

それはともかく、バイトという線は消えた。

見たところ、館に住んでいるといってもいいだろう。

「まあまあ、館の脱出方法を教えてくれないかなー?」

「その前に、自己紹介ぐらいさしてくれない?名前の方が親しみが沸くでしょ?」

自己紹介するほど、仲良くなるとは思えない。

小声で愚痴を言ってると、二人が俺を見てるのに気付いた。

「さ、さっさと自己紹介やっちまおうぜ!じゃあ、まずはあんたから」

「年上にあんたとは失礼ね」

「坊やも十分失礼だろう」

「まあ、いいわ。私はウルリカ、ウルリカ=アルトマン。支配人の妹で一緒に暮らしてる」

「さっきよりも状況が悪くなってるじゃないか」

兄妹だったとは、益々敵対してもおかしくない状況だ。

「何?兄妹だから、兄と同じだと思ってる?残念、私は兄の悪趣味に付き合う気はこれっぽっちもないわ」

だが、いつ敵対するか解らないから、油断はしてはならない。

「ハイ、次は金髪のあなたね」

「ええっとねー、名前はティーナ=神崎。病院で外科医を務めているよー。年は18~23の間だよ。はい、恭耶君」

実年齢が気になるところだが、さっさと館から出たいので後で聞くとしよう。

「俺は鷹威恭耶。皐月鳴高校2年。最近は負け気味と、思い出すだけでむかむかしてきやがる。これくらいだ」

全員が自己紹介をおわらし本題に入ろうとする。

「なあ、一ついいか?」

「何?」

「本当にお前は人を襲わないんだな?」

「お前?名前はさっき教えたはずだけど?恭耶は脳の病気?」

「んなわけあるかよ!それだけ警戒してるんだよ」

「ふーん、襲ったら、どんな反応するのかなあ?」

ここは素直に名前を呼んだほうがいいのか。
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