第七世界
「あ、ウルリカさんは日本語がとても上手だねー」

話の筋を変えるように仕向けたのか、ティーナさんが別の話を持ってくる。

「ウルでいいわ。日本に来たのは随分前だからさ。嫌でも頭が覚えるのよ」

「嫌なら、何で帰らないんだよ?」

「帰っても居場所がないから。それに、兄さんが日本を好きだから」

「居場所がない?」

「私達兄妹は母国に帰っても忌避される存在だからね。もういいじゃない、恭耶達はここから出れば私達と関係がなくなる。OK?」

「だけど、放っておけばウルの兄貴がまた日本人を殺す。日本が好きなのに日本人を殺すって、おかしくねえか?」

「さあ、知らないわ」

「知らないで済む話かよ。話を聞いてりゃ、お前たちの存在が忌避されるのは当たり前だろ」

「恭耶君」

「誰かに受け入れられたければ自分達から溶け込もうとしなけりゃ、居場所なんか作れるわけねえだろうが!我が侭いってるんじゃねえよ。それに、お前がやったわけじゃないが、見てみぬふりも同罪なんだよ!さっさと止めさせるのが家族だろうが!」

「恭耶は何も解ってない。溶け込もうとしても嫌悪され、挙句の果てには存在自体が汚物だと言われ排除される。私達の存在はそこまで醜い物よ。それに、私の力では兄には勝てない」

「ち」

「恭耶君、特別な能力っていうのは、普通の人にとっては危険視されるのー。解ってあげてー」

「ち、解ったよ。それで、お前たちの存在って、何なんだよ?」

「ヴァンパイアとでも言えばいいかな」

鬼といい、急に出番を与えられすぎだろう。

「実際に目の前にいるのよ。信じない?」

「いや、お前達がヴァンパイアというのならそうなんだろう」

「へえ、そこは信じるんだ」

「世の中には不思議な事はあるのは最近、痛いほどに知ってな」

「ふうん、そうだ。いい事思いついた」

「何だ?」

「恭耶も仲間になればいいんだよ。奇麗事ばかりをほざくことなく、本当の苦しみを理解できるはず」
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