第七世界
「逃げる方法を考えてるのかい?」

「うるせえよ!」

「くっくっく、方法なんてないよ。僕を倒すことしかね」

非常に情けないが、時間を稼いで楓の到着を待つしかない。

「先生を待とうなんてしてるんじゃないだろうな?それもいい考えかもしれないねえ。だけど、それまで保つかな?ほら、いくよ」

俺の心を見透かしてるのか?

人の心を見るなど、千里眼を持っていない限り無理なことだ。

海江田がそんな高等技術を習得しているとは思えない。

「今は避けるしかねえ」

海江田は容赦なく突きを繰り返す。

必死で何度も避けるが、人間なので足に限界が来る。

何度目かは解らないが足にガタがきてしまい、もつれてしまう。

「しまっ!」

海江田の狙い済ました突きが鳩尾にクリーンヒット。

「ご!」

腹を押さえて激痛に悶え、立ってられなくなって床を転がる。

やばい、四天王は伊達じゃない。

「まあ、病院のベッドで勘弁しといてあげるよ。これで終局さ」

恐怖からか、突き下ろされた相手の攻撃に対して目を瞑ってしまう。


目を瞑って数秒。

いつまで経っても痛みが走らない。

周りも静かになって、時間が止まってしまったようだ。

「いつまで寝てるんだ」

色々と考えていると、俺の名前を呼ぶ女性の声がする。

聞き覚えがあったので目を開けると、ボサボサで長い赤毛の楓がいる。

楓は海江田の腕を掴んでいて、後一歩のところ止めている。

「四天王に喧嘩を売るなんて無茶をする」

「そいつが許せなかった」

「君らしいというか、ね」

笑みとも怒りともとれない顔だ。

感情のない顔というのか。

見つめていたが、緊張が解けて意識が途切れた。
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