第七世界
男の出で立ち、緑の学ラン、緑のキャップ付きの帽子、鋭い眼光。

男は恭耶に近づき、刺さった刃を抜く。

「最初から、俺とお前の間にハンデなど存在しない」

懐から出した白い布で血をふき取る。

「女、お前が医者であるのなら後は任せる」

男はウルリカの前に立ち、構える。

「やっぱり、人間は信じられないな。同じ人間ですら簡単に殺すもの」

「自分の信じるモノに頼って生きるのならそれでいい。だが、それで生じた諍いで死したとしても自分の責任だ」

「それが現実ね」

二人は対峙する。

「名前を聞かせてくれない?」

「乾、光蔵」

「私はウルリカ=アルトマン」

雨の音の中、先に動いたのはウルリカ。

ヴァンパイアの速さは常人の目では捉えられない。

だが、常人でなき存在はウルリカだけにあらず。

剣武の才に秀でた乾は、常人の存在を超えていた。

タイミングを合わせて、袈裟斬りで刀を振るう。

ウルリカは横に避けると同時に、首をもぎ取ろうと反撃の爪を押し出す。

しかし、前へ踏み出て、横から来る爪を回避する。

乾はすぐさま足に力を入れて止まり、身を回転させながら刀を放つ。

「雪・月・花!」

速度の速い三連を二連まで、ウルリカは受け流す事を可能にした。

だが、長年鍛え上げられてきた技術を、付加能力だけで超える事は出来なかった。

刃が肩を打ち抜く。

「ぐう!」

乾の目に終局を迎える色はなし。

一気に引き抜いた刃の峰でウルリカを切り伏せた。
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