第七世界
ウルが立ち上がろうとすると、フラついた。

「おいおい、無茶すんな。回復してねえんだろ?」

「ちょっと血、くれない?」

「それで、元気になるのか?」

「なるなる」

「ほれ」

俺は腕を差し出すと、ウルは噛み付いて血を吸いだした。

嫌な気分はしないのだが、気だるくなっている。

一分後に口を離すと、ウルはツヤツヤになっていた。

「あー、やっぱ人間の血って最高」

ウルはシャドウボクシングやら肩を回しながら、自分の調子を確かめた。

逆に、俺はげっそりしている。

「お前、吸いすぎ」

「私に元気になって欲しいんでしょ、結果オーライじゃない?」

ウルは乾の方を向く。

「光蔵は強いね」

「斬られた事を気にはしないのか」

「気にしてもしょうがないよ。もう一度闘っても、勝てないだろうしね」

「賢明だ」

椅子から立ち上がる。

「少し気になったんだけどよ、何でここに来たんだ?」

刀を持って現れたというのは、ここで行われている事を知っているかのようだ。

「皆木氏に呼ばれた」

帽子を深く被ると、先を歩いていく。

「楓が?」

乾光蔵と楓は知り合いなのだろうか。

一体、どういう関係なのだろう。

「全く、一人で進んでいくんだから、乾にも困るわ」

もう一人、家の外から入ってくる人影があった。
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