第七世界
ところどころに穴があり屋敷の広さが伺えるのだが、最初は店にいたんだよな?

店と屋敷はつながっているのか?

それとも、店とは別の屋敷に連れられたのだろうか?

今となってはどっちでもいいのだが、帰る際にどこにいるのか解らないというのは面倒だ。

しかし、乾とキャサリンが来たことから、そこそこ近いんだろうけどな。

「お、やっと終わりかもね」

キャサリンの声で現実に引き戻されたのだが、近くから女の声が聞こえてくる。

「兄さん、もう鬼ごっこと称しての人狩りは止めよう」

「ウルリカ、お前は私のストレス具合を分かっているものかと思っていたのですが」

「兄さんが人間とのやり取りによって多大なストレスを生み出している事は、痛いほどに分かる」

「お前もストレスで疲れているんです。一緒に参加すれば、そんな些細な事を言う必要はなくなりますよ」

「そう、私は誤っていたよ」

「そうでしょう?」

「私が言いたいのは、何故兄さんを止めてこなかったのか解らないって事」

「ほう」

「私達が人間達に迫害を受けてきたのは事実。でも、もういいじゃない。人間達は釣りが出る程殺したわ。そろそろ、潮時だと思うの」

「ウルリカ、私は悲しいですよ。お前は唯一の家族なのに、家族にすら見放される孤独感をどう処理すればいいのですか?」

「私が兄さんを見放すわけがない。罪を償う時は一緒に痛みを背負うから、止めよう」

「Be quiet!自他の痛みの共有など幻想にすぎないんです!ストレスや痛みを感じるのは本人のみです!他がそれを理解する事など永遠にありはしないのです」

「兄さん」

そろそろいいだろうと、俺とキャサリンは話しているであろう部屋にドアを突き破って突撃した。

「おい!てめえ!ウルの身を捧げるくらいの説得を理解しねえとはどういう事だ!」

部屋の中には乾、ウル、アルトゥールの姿がある。

床のところどころには血の跡があり、アルトゥールの傍には五体満足ではあるが、動く気配のない女性が数体横たわっていた。
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