第七世界
部屋は広間よりも広く、軽く人が暴れられるくらいはある。

家具やカーペットは赤で支配されていた。

「あの時のお嬢さんじゃないですか。自分から私のところに来るとは、鬼ごっこの意味がありませんよ」

「うるせえ!テメエはウルの話を聞け!」

「お嬢さんが下品な言葉を使ってはいけませんよ」

「俺は男だ!」

カツラを床に叩きつける。

その時、アルだけではなく、キャサリンや乾も時間が止まっていた。

「私を欺いたわけですか」

「俺だってこんな格好したくねえわい!」

俺を女装させた当の本人は、今だに姿を見せない。

「人間を殺したところで、ストレス社会はなくならねえ!」

「なくならないのは理解していますよ。私はストレスを軽減させるためだけにやっているのですからね」

「馬鹿野郎!!これ以上やっても、生き難い世界になるだけだ」

「言うだけ無駄だ」

乾が柄に手をかける。

「そうねえ、話を聞くような輩ではないわね」

キャサリンは準備運動を行っている。

「おいおい、まだ話は終わってねえだろ」

「兄さん、私達は別の生き方も出来るはず」

「出来ませんよ。人間を殺す事こそが、ヴァンパイアである私の定めと決められています」

アルトゥールは爪を伸ばして、戦闘準備を行う。

間を置く事無く、乾が動いた。

乾は鞘から刀を抜く前に、親指で何かを弾いてアルトゥールへと飛ばす。

アルトゥールが避けるモノかと思いきや、何をする事もなく内臓に刺さった。

「ふ」

乾は低い姿勢でアルトゥールの前に辿り着いている。

上空からはキャサリンが、攻撃を与えるために近づいている。

アルトゥールは先にどちらを殺すか決めたらしく、上空のキャサリンに爪を伸ばしていた。
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