第七世界
「おっと」

普通の人間ならば、決して爪の伸びる速さから逃れる事は出来ない。

そして、宙で蹴りを出す事も、不可能だろう。

この世界には、鬼やヴァンパイアや銃刀法違反をしながらも指弾を飛ばす人間や千里眼がいる。

まさに新たな境地の人間が存在している。

そう、空中で蹴りを行って爪を弾き飛ばし、何もない後方の宙を蹴って一気に近づく。

アルトゥールは避ける事無く、下の乾に胴体を真っ二つにされ、上からはキャサリンの拳によって上半身を後方に吹っ飛ばされる。

キャサリンは静かに地上へと、降り立った。

「何?呆気なさ過ぎない?」

「気を抜くな」

下半身は倒れる事無く、血を流しながら立っている。

「ウル、お前の兄貴、死んだぞ」

映画で見る作り物のグロさとはまた違う。

下半身からは内臓を覗かせているようで、目を覆いたくなる。

「あれで死ぬのなら、今世紀まで生きてはいない」

「何?」

「兄が人間に負けない理由、彼は本当のヴァンパイアであり、負けない能力を所持しているから」

「能力?」

「そう、不死身」

下半身から上半身が形成されている。

だが、乾から怯む様子は伺えず、回復する隙を与えない。

再び指弾を飛ばし、両足の骨を粉砕する。

足が急速に力を失い膝をつく。

だが、再生が終わるわけもなく、どんどん上半身が出来上がっていく。

今の状態で切り裂く事が無駄であると悟ったのか、二人はバックステップで下がった。

「タフとか、そんな問題じゃなさそうね」

「対策がなければ、どんな傷をつけても無意味か」

どれだけ殺しても生き返るというのなら、体力の無駄遣いでしかない。
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